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イスノキの虫こぶ

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イスノキに暮らすアブラムシの虫こぶ

昨年の初冬、群馬で植物群落の調査のお手伝いをした時、頭上に気になる虫こぶがありました。虫こぶ(ゴールともいう)とは虫やダニなどの寄生によって植物の細胞や組織が病的に過成長や過増殖したものと定義されています。

その大きくなった内部に寄生種が住み、植物を内側から食べて成長していきます。ダニやタマバチ、タマバエ、アブラムシなど多くの生き物が虫こぶを作ります。

さて、イスノキには10種類上のアブラムシが虫こぶを作ることが観察されていますが、僕が群馬で見つけたのは2種類です。

イスノナガタマフシ(イスノフシアブラムシ)
イスノナガタマフシ(イスノフシアブラムシ)

虫こぶの中にたくさんのアブラムシ

が、生活しているのですが、僕の見つけた初冬では既に旅立った後でした。写真で分かるように脱出のための穴が大きく空いています。

そもそもイスノキは沖縄から本州では静岡以西に自然分布しているのですが、植栽で各地に植えられたので群馬でも見つけることが出来ました。おそらくアブラムシも苗木について分布を拡大しているのでしょう。イスノキにつくアブラムシは春から夏にかけては虫こぶの中で生活しますが、秋以降になると翅の生えたアブラムシが誕生し、よその木に移っていきます。

モンゼンイスフシ(モンゼンイスフシアブラムシ)
モンゼンイスフシ(モンゼンイスフシアブラムシ)
シーボルトの日本植物誌に載っているイスノキ
シーボルトの日本植物誌に載っているイスノキ

イスノキその別名ひょんのきとは

モンゼンイスフシの脱出後の虫こぶは形も丸く堅牢なので、昔の人は胡椒入れや、ひょうたんの代わりにしていて「ひょんのき」、また穴に息を吹くとひょうひょう音が鳴るのでという由来もあるそうです。僕も実際に吹いて遊んでみました。

虫こぶは中に虫がいることが分かり切っているので、ガの幼虫などが食い破って中のアブラムシを食べることもあります。虫こぶに人為的に穴をあける実験をしたところ、兵隊アブラムシが穴に集まってきて、白い凝固性の体液を出して穴を塞ぎ始め、さらに周辺の植物組織を刺激して、組織を増殖・再生させるということなので驚きですね。

イスノキの葉と実
イスノキの葉と実

あまり関東や信州に暮らしていると馴染みの薄い樹かもしれませんが、植栽樹として生えている場所もありますので、もし見つけたら虫こぶもぜひ探してみてください。

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